作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。4人目のゲスト、3度の宇宙飛行を経験した野口聡一さんとの対談の第2回(全3回)です。
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大宮:大学時代、結構勉強されてたんですね。私はシケプリ(講義内容をまとめた試験対策プリント)を暗記して臨む感じで……。
野口:試験前になると出回る(笑)。
大宮:200円で買うんですよね。
野口:英語やフランス語は点数取れたけど、他はまさにシケタイのみなさんにお世話になりましたよ。
大宮:ええ! 野口さんも?
野口:当時はね。
大宮:遊びに行ったりしてましたか。
野口:アメフト部の仲間と練習終わった後、マージャンしに行くとか。
大宮:へー。お酒は飲みますか?
野口:むちゃくちゃ飲みます。
大宮:合コン行ったりしましたか。
野口:してました、してました(笑)。
大宮:普通の学生ですね(笑)。
野口:そういう意味では、勉強は東大の中では真ん中ぐらいだったと思うんです。やっぱり、東大でできる人ってすごいできるじゃないですか。
大宮:野口さんはすごいできる人たちのグループだと思ってました。
野口:いやいや……。まさにレベルが違うっていうのを見るのはいい経験だった。僕は田舎から来たから。
大宮:出身はどこですか。
野口:神奈川県茅ケ崎市で、自分の学校では東大に受かったのは僕が第1号。開校以来の秀才と言われて東大に送り出されたけど、来てみたら秀才がいっぱいいるんだな。
大宮:そうですねえ。
野口:そこで世間の洗礼を受けた。僕が東大で良かったと思うのは、すごい人が世の中にいっぱいいるっていう、ごく当たり前の真理を肌感覚で理解できたことですね。社会に出ると全く同じで、それまでは同じ学年の勝負だけど、会社では「この人この分野で何十年もやって、かなわないぐらい詳しい」みたいなことがいっぱいある。18歳くらいで「この人には絶対かなわない」って知るのは、大事なことだと思う。NASAに行ったときもエリートのレベルが違う人もいて、僕みたいなサラリーマン経験者じゃ太刀打ちできない。
大宮:野口さんでもかなわないって思うことあるんですね。意外です。
野口:いえいえ、大学院を修了してIHIでは普通の従業員でしたよ。