社外取増=優れたガバナンスの誤り
取締役の「質」低下が内乱誘発
やはり社外取比率が46.2%(13人中6人)と高いみずほFGでも、ガバナンス不全が明るみに出た。
システム障害を繰り返したみずほ銀行と親会社のみずほFGに対し、金融庁は昨年11月、業務改善命令を出し、社外取を含めた取締役会の「問題点」を指摘した。具体的には「構造改革に伴うシステムリスクに係る人員削減計画と業務量の状況について、十分に審議を行っていない」というものだ。
言うまでもなく取締役会の使命は経営執行の監督にある。しかしその取締役会が経営の実態を把握せず、審議すら行っていないのであれば、その存在意義はない。
「社外取が増えるほど、取締役会の議論の質は低下する」。そう指摘するのは、一橋大学大学院経営管理研究科特任教授の藤田勉氏だ。
銀行のみならず、東芝や三菱電機など不祥事を起こした大企業は、優秀な社外取が多い。だが藤田氏によれば、「社外取増=優れたガバナンス」とはならず、その効果は限定的だという。
その理由について藤田氏は「一般論として月に1、2回の会議に出席するだけの社外取に会社の重要な人事などを任せるのは無理がある。報酬を支払うのは会社なので、波風を立てずに長く務めたいと考える社外取がいても不思議ではない」と話す。
社外取には、会社の業態や業界に関する専門的な知識も必要だ。だが、ある上場企業の経営者はこう嘆息する。「取締役会でプロジェクトを提案したら、社外取から『それは企業価値の向上につながるのか』と尋ねられた。それをチェックするのが取締役の仕事のはずなのに……」。
社外取の数合わせだけでは真のガバナンス改革につながらない。重要なのは経営と監視の双方の質の向上だ。「量」から「質」への深化を、いち早く進めなければならない。