中学校1校、普通科高等学校2校、広域通信制・単位制高等学校1校を設置する学校法人郁文館夢学園ではいま、1700人ほどの生徒たちが学んでいる
中学校1校、普通科高等学校2校、広域通信制・単位制高等学校1校を設置する学校法人郁文館夢学園ではいま、1700人ほどの生徒たちが学んでいる

 二人の教授のプレゼンテーションを聞いた後、生徒たちは数人ずつのグループに分かれて、「留学中に何をしたいか」「どんな人になりたいか」をテーマにディスカッション。共有のフォームには、「ボランティア活動に取り組みます」「コミュニケーション力を身につけたい」「多言語を学ぶ」「自分から行動する」などの目標が書き込まれていく。

 続々と続く生徒たちの書き込みに、丸楠教授も西澤教授も「どれも正解」とうなずくが、一つ、ひときわ教授らの注目を集めた書き込みがあった。それは、「目標とする人物はコービー・ブライアント。留学中やりたいことは英語とバスケ」という書き込みだ。

 なぜこの書き込みが注目されたのか。西澤教授が生徒たちに伝えたのは「具体的であること」の重要性だ。

「頭の中に具体的なイメージを持たないと、結局は動けないですから」と西澤教授。丸楠教授はこれにうなずき、自身の留学中を振り返りながら「コミュニケーションには苦労した」と告白。その上で「伝えたいという強い意欲を理解してもらう。大切なのはテクニカルな能力よりもマインドだ」と生徒たちに訴えた。

 授業は終了の予定だったのだが、チャット欄に生徒から「どうしても直接質問したいことがある」と書き込まれる“ハプニング”。海外大学への進学も考えているというe特進クラス1年生の保坂詩音さんは、「文理の選択はどの程度、将来に影響するか」と質問。上智の西澤教授は「あらゆる学問にデータサイエンスが関わるようになったことで、文系と理系の垣根はなくなってきている」と説明。関西学院の丸楠教授も「関西学院大学の国際関係学部で学んだ学生が、データサイエンスを扱う海外の大学の大学院に進学しているケースがある」と実態を伝えた。

 西澤教授が教壇に立つ上智の経済経営学科に進学を希望しているというグローバル高校1年生の渡辺麦さんも手を上げて、「大学進学まであと2年。最初の1年は留学。次の1年はもう高3です。どんな風に過ごせばいいか」と質問した。

 西澤教授はまず、「ここで出会ったことをきっかけに、上智大学について、経済学部について、もっとよく知ってほしい。近くなのでぜひ一度遊びに来て」とメッセージ。その上で、学校推薦型選抜(公募)での受験を検討しているという渡辺さんに「現地でどういう体験をしてきたのか。ありきたりなことではなく、本当に体験したことを伝えてほしい」とアドバイスした。

授業後に提出されたアンケートには、「将来のためになる内容だった」「グローバル=語学力という概念が覆った」など、生徒たちの感想がびっしり
授業後に提出されたアンケートには、「将来のためになる内容だった」「グローバル=語学力という概念が覆った」など、生徒たちの感想がびっしり

 オープンキャンパスでの体験授業などを除けば、今回のように高校生が大学教授と接点を持つ機会は少ない。教授らに直接質問したり、生の話をきいたり。一本のメールから生まれたこの授業が生徒らに与えた刺激は計り知れない。(文・AERA編集部)

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