健治さんと記者の一問一答は次の通り。
―最後に長女Aさんや孫のBさんに会ったのは?
「1998年10月に眞須美と一緒に詐欺で逮捕されて、ワシは刑務所に行きや。滋賀刑務所から出所して数か月ほどした、2005年夏ころかな。長女AがBちゃんを連れて、会いに来てくれた。本当にかわいい孫だった。2人と会ったのは、それっきりや。その後、長女は当時の夫といろいろ揉めて、離婚。それもあってか、ワシのところに来づらくなったのかもしれない。それでも長男を通じて、元気にしているとは聞いていた。長女はきょうだいの中では、一番に気丈でしっかりした子だったので、何ら心配していなかったのに…」
―事件を聞いて思い当たることは?
「まったくわからない。こんなことになる前に何か相談をしてほしかった」
―新たに出された眞須美死刑囚の再審請求と関係があるのか?
「長女やBちゃんの事件は再審請求される前日のこと。それも知らなかったはず」
―警察はBさんが虐待を受けていた疑いがあると捜査している。
「長女の自殺後、そういう質問がマスコミからたくさん来ているが、実態はよくわからない」
―長女の夫はBさんが病院へ運ばれた時、救急車に乗って付き添ったそうだが、面識は?
「長女が再婚したと聞いていたが、夫とは会ったことはない。警察はこれから夫に話を聞いて、真相解明するのでと教えてくれた」
―AさんやBさんとの思い出は?
「長女は眞須美との間にできた4人の子供の最初の子や。制服姿で緊張していた幼稚園の入園式、楽しそうにしていた小学校の運動会、思い出は尽きない。Bちゃんとは1回しか会っていないが、目がクリっとして愛くるしい表情、小さな手は今も目に浮かぶわ。なぜこんなことになってしまったのか…。つらい。娘と孫をいっぺんに失うなんて、言葉もない」
和歌山カレー事件を長い間、取材した記者は亡くなった健治さんの長女Aさんとは面識があった。両親の支援集会や弁護団会議によく姿を見せていたのでAさんと話す機会が何度もあったのだ。