だが、最近は優秀な官僚の間からも公務員の人事俸給制度を抜本的に変えないと、もはや優秀な人材が霞が関に来ないという危機感を露わにする人が増えた。一律横並びで昇進し給与も増えていく仕組みではなく、若くても抜擢でき、ポストによって給与も大きく差をつけ、実績によって賞与を弾むことができる仕組みが必要だというのだ。
菅義偉内閣は、人事院総裁に民間の川本裕子・早稲田大学大学院経営管理研究科教授を指名した。旧東京銀行を経てマッキンゼーでコンサルタントとして活躍、さまざまな政府の委員を歴任した。政府の審議会では歯に衣着せぬ発言をする改革派として知られてきた。菅官邸が川本氏に人事制度改革の勧告を期待しているのかと思いきや、どうもそうではないらしい。官邸に近い自民党幹部によると、川本氏を選んだのは「女性だから」。菅内閣もジェンダーバランスに配慮しているということを示したかっただけだ、というのだ。
さて、川本氏が霞が関の人事のあり方にどんなスタンスで立ち向かうのか。今まで通り、霞が関ムラが喜ぶ給与引き上げ、賞与引き上げの勧告を出すだけの存在で終わるのか。大いに注目したい。
磯山 友幸(いそやま・ともゆき)/経済ジャーナリスト
千葉商科大学教授。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。