
「浴室に響く洗面器のカポンという音や、勢いよく注がれるお湯、そして見上げると穏やかなペンキ絵が広がる……そんな銭湯が子どもの時から大好きだった」という大原さん。その銭湯のペンキ絵が動き出すという作品で、「普段通りにお風呂で疲れを癒やしながら、ふと見上げてゆっくりと小旅行を楽しんでいただけたら幸いです」。
歴史あるザ・銭湯、金春湯のお客さんの後ろで、カッコいい未来のペンキ絵が、まるで江戸時代からあったように馴染んでいた。
続いて吉祥寺にある「弁天湯」(武蔵野市)で展開されている「みいつけた!湯」だ。アーティストは、NHK Eテレの幼児向け番組「みいつけた!」でアートディレクションを担当する大塚いちおさん(52)。呼んでなくても「よんだ?」のセリフで知られる「オフロスキー」など、同番組のキャラクターが「弁天湯」を賑やかに盛りあげている。
「銭湯の独特な雰囲気と番組の雰囲気がどう交わるか楽しみにしていましたが、できあがってみると想像以上にゆるく(笑)、不思議な世界に仕上がり、大満足しています」(大塚さん)
■古代ギリシャの浴場
障害のあるアーティストらが独特の発想で手がける芸術表現「アール・ブリュット」も、銭湯とコラボした。「生(き)の芸術」とも呼ばれる、注目されるアートの一分野。都内最大の銭湯として知られ、高齢者から幼児まで、さまざまな人がお風呂を楽しむ鶯谷の「ひだまりの泉 萩の湯」(台東区)に、アーティストの青木尊さん(52)、星清美さん(48)の自由な表現が、絶好の相性となっている。
「頭の中に浮かんだ風景。草花や木も頭に浮かんできた色をつけました。風景だと思って見てもらいたい。特に色に力を入れたから、色を見てほしい」
そう青木さんは、メッセージを寄せてくれた。
「オリンピック関連イベントだけに、古代ギリシャの神々と運動とのつながりを感じてほしいというのがありました。来日する外国人に、日本ではオリンピックの発祥がギリシャであることが認識されているんだ、と思ってもらえたらおもしろいとも思いまして」