日本で木造建築は縄文時代後期にさかのぼり、2千年の歴史がある。法隆寺は、現存する世界最古の木造建築とされる。同じく奈良には東大寺大仏殿もある。
先人たちが「トライアル・アンド・エラー(試行錯誤)でいっぱい失敗してきた」とみているのはアルセッド建築研究所の大倉靖彦副所長。経験の蓄積で、木造の大型建築を残してくれたという。
建築でコンクリートや鉄に代わり木造化することを「ウッドチェンジ」と呼ぶ。日本の先人が得意としてきた木造が、現代の大型建築によみがえろうとしている。その意義について、森林総合研究所・研究ディレクターの渋沢龍也さんは、(1)環境に優しい、(2)木材はけっこう強い、と話す。
地球温暖化の元凶とされる二酸化炭素を、森の木が吸着する。二酸化炭素を吸着した木材を建築に使用することで、二酸化炭素はそこに固定化される。そして木材を伐採したところに植樹すると、育つ過程で新たに二酸化炭素を吸着する。
木造の建物は人に優しい効果があることも科学的に実証されている。木の香りがストレスを軽減するほか、血圧を下げ、免疫力を向上させ、睡眠の質を向上させるなどの効果がわかっている。
何よりも、地元で伐採した木で建てた建物は地産地消で、「愛着がわいてクレームが出てこない」と話すのはアルセッド建築研究所の三井所清典所長。一般の建築では顧客のクレームがつきものだが、愛着のある建物になると顧客の反応が違ってくるのだという。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2022年7月22日号より抜粋