■どんな人がシニアになっても引く手あまたなのか
「人生100年時代」と言われるようになった現在、少し前は定年とされた60歳を超えて働くことが当たり前になってきました。企業もこれから人手不足が深刻になっていく中で、労働力確保のためシニアの活用をより考えるようになるでしょう。
ただし、シニアと言われる年齢になってからも「第一線」で活躍し続けるのは決して簡単ではありません。定年延長がなされても多くの場合、補助的な役割に回ることが多く、第一線でバリバリ働き続けられる人はあまり見かけません。
60歳を超えて第一線で活躍し続けている人としてすぐ思い浮かぶのは、還暦で起業してライフネット生命を上場させた後、古希で立命館アジア太平洋大学の学長に就任された出口治明さんでしょう。昨年、『還暦からの底力』を出版し、年齢にとらわれず働くことの重要性について述べています。
私が直接面識のある人物の中では、NTTで役員を務めた長谷川寿彦さんが思い出されます。長谷川さんはデータ通信畑を歩き、1985年のNTT民営化と同時に最年少取締役として抜擢されましたが、リクルート事件で退任された人物です。
リクルート事件の関係者と聞くと一般的な印象はあまり良くないかもしれませんが、経歴から分かる通り、当時の日本の情報化の中心にいた方ですから非常に優秀で、かつ広範かつ強力な人脈をお持ちでした。
相談に対するお答えは正鵠(せいこく)を射ているし、豊富なネットワークを持っていてとても頼りになるということで、NTTを離れてからもいろいろな会社から「手伝ってほしい」と声がかかっていました。長谷川さんが65歳くらいのときにお会いした際、無料も含めた顧問先は二けたもあったと記憶しています。
「NTTで同世代の連中はみんなお役御免になり、悠々自適でヒマになっているが、私は丸山君のような若い人たちと毎日仕事ができて幸せだよ」
そうおっしゃっていたのをよく覚えています。