都内屈指の繁華街・歌舞伎町。4月19日撮影(c)朝日新聞社
都内屈指の繁華街・歌舞伎町。4月19日撮影(c)朝日新聞社

「路上でたばこを吸っているだけに見えても、裏バイトで援助交際、ようは売春する子もおる。トー横の路地の奥は売春通りやし、その裏はホテル街。買う大人がいて、すぐホテルに連れ込める。大人が『バイトするか』と声をかけ、一人だと危ないから女の子同士で組んで連絡を取り合ってこっそりな。ロリコンだけじゃなくて、少年を買うショタコンもいっぱいおる。子どもらは稼ぎ方を知ってんねん。大人は知らん顔をしているだけ」

 さらに、違法薬物への入口になる市販薬に関する情報を共有することもあるという。

「一気に飲むと酩酊状態になる咳止め薬が簡単に手に入るとかな。近くにたくさんあるドラッグストアで、1人1本までと書いてあるものを1日2、3本も飲んで中毒になっていく子もおる。レジ裏の棚に置いている店もあれば、手に取りやすい場所に陳列している店もある。違法薬物ではなし、これ飲んだら『パキれる』とか、こうした情報が直ぐに、この子たち同士のツイッター内で飛び交う。そこをこじ開けて、しっかり見ていかない限り、犠牲者が生れていくだけ。一人でも大人が気付ければ、助けられる子はおる」

 玄さん曰く、「かつてはヤクザがそれぞれの縄張りに目を光らせていた」ため、子どもは近寄りがたい場所であり、悪さがしにくかった。だが、いまでは防犯カメラが監視し、事件が起きたら追跡するといったように、人の目が機械化された。夜になっても明るい歓楽街は、防犯カメラに見守られる、ある意味の安全をもたらした。しかし、コロナ禍で辺りの飲食店は次々と休業。住民がおらず、ただでさえ希薄だった歓楽街の人間関係は、コロナ禍によって、その希薄さがより顕著に表れたという。

「議論の中心にいるのは大人ばかりで、子どもたちはいつも蚊帳の外。大人たちが生じさせた歪みのしわ寄せが、子どもたちにいった結果が、最悪の事態として未成年の自殺が起きたと言っても過言ではない。歌舞伎町は3割の店が潰れ、路面店が閉まれば閉まるほど、みんな見て見ぬふりして、無秩序になっていく。歓楽街の商売人は営業時間の短縮で苦しめられ、どんどん規制がかかり、大人は疲弊して自分のことだけで精一杯。看板だけ掲げているところもあるけど、実際は潰れとる。畳んだら協力金が入らんから休業にしているだけ。もう、大人たちですら先が見えん。休業が解除になっても、もう体力はない」

 未成年の自殺があった5月11日の翌日、記者は現場を訪れた。そこには、鮮やかな黄色いひまわりや淡いピンクの花が添えられていた。火をつけて間もなく消した痕跡のあるたばこも数本並んでいた。亡くなったのは未成年なのだが……。

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