新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」の適用が4月20日、千葉県の5市で始まった。ただ、JR津田沼駅周辺の飲食店や地元住民からは、「市単位で分けるのは意味がない」と早くも県の対応に異論が噴出している。
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なぜなら、同駅周辺の繁華街は対象の船橋市と対象外の習志野市の境界が極めて複雑に入り組んでおり、「不公平」という言葉では言い尽くせない事態を生んでいるのだ。
「瞬殺でしたよ」
適用初日の20日午後7時過ぎ。JR津田沼駅北口のとある居酒屋から出てきた30代のサラリーマンの2人組は苦笑いした。津田沼での仕事を終えて6時過ぎに入店したが、あっという間に7時のラストオーダーを迎え飲めなくなってしまった。
「店の人から、あっちの方はまだ飲めると聞いたので行ってみます」
2人組は足早に店を後にした。
千葉県内で今回のまん延防止措置の対象となったのは、浦安、市川、船橋、柏、松戸の5市。適用により、5市の飲食店は午後8時閉店、それ以外の飲食店では午後9時までとなる。
「飲食店にとって、一時間の違いは大きいと思います。それとともに、新型コロナの感染拡大防止という意味でも、まん延防止措置の対象は市で区切るのではなく、『津田沼の繁華街』を一体にして考えてほしかった」
こう複雑な表情で話すのは、JR津田沼駅の北口そばに広がる繁華街「船橋市前原商店会」の大塚智明会長だ。船橋市は20日からまん延防止措置の対象となった。
一方、同じ北口駅前にある「立ち呑み いわ鬼」店主の山崎興氏はこう語る。
「船橋市の店から、うちの店にお客さんが流れてくれるかもしれないという期待感はあります。ただ、それ以上に店が混みすぎて感染のリスクが高まることが怖いです」
「船橋市から流れてくる」と話すが、実は「いわ鬼」の店舗は先ほどの大塚さんの店からは300mも離れていない。
同じ北口駅前の繁華街なのだが、こちらは措置の対象外の習志野市。先ほどのサラリーマン2人は、飲みたければ「あっち」。つまり、ちょっとだけ歩いて習志野市側に移動すれば良いと知ったということだ。