オンライン授業で課題として挙げられるインフォーマル(非公式)なコミュニケーションも、寮生活などの物理的な場の提供とともに、オンラインでのコミュニティー化が図られている。対面であろうと授業で一緒になった学生と連絡先を交換することがそもそも少ない東大とは対照的に、学生が自主的にFacebookで授業ごとのチャットグループを作っている他、大学側で全教員・学生が参加するコミュニティーポータルサイトも立ち上げた。そもそも学期ごとに住む都市が変わるカリキュラムのため、学年が違う学生とは対面で会うこと自体が難しいが「授業で知り合い仲良くなって、互いのSNSをフォローし合うようになり、そこで深い話もするようになることは結構ありますね」。一度も対面で会わずとも友人と呼べる関係の相手を作ることはできるという。
オンライン授業前提のカリキュラムやシステムを持たない他大学でもミネルバ大学の授業から生かせる点は何か。片山さんは「まずは授業の構造化を行うことが鍵」だと指摘する。効果的なオンライン授業のやり方を構造化し、各教員が自分の授業で使えるようにすることが大切だという。
ミネルバ独自のプラットフォームがなくとも、例えば授業の各項目の進行を管理する機能などは、手元でタイマーを設定しておけば代替できる。それに加え、少人数授業であれば授業態度によってはペナルティを与えるようにすれば、学生の集中も保てるはずだという。
学生に協力を求めるのも一つの手だ。ミネルバ大学では学生が授業に対して積極的にフィードバックをし、学内アルバイトの形で運営支援も行っている。授業の運営支援か、カリキュラムの構築支援か、形態はさまざま考えられるが、いずれにしろ「教員・学生が一緒になって(オンライン)授業を作り上げるという感覚があってもいいかもしれませんね」。
(文/東京大学新聞社・高橋祐貴)