カオハガンキルト(撮影:熊切圭介)
カオハガンキルト(撮影:熊切圭介)

物語の続きを呼んだ島の「奇跡」と「軌跡」

 話はそこで大団円――ではなかった。

“青空写真展”を楽しむ島の人々の表情があまりにまぶしく、それ自体が貴重な記録になった。一方、父・圭介さんが日本写真家協会の会長に就いたことで多忙になったこともあり、父のライフワークだったカオハガン島のバトンは息子の大輔さんに引き継がれた。物語には自然と「続き」が用意された。

“SDGsな”成長を遂げた島の「奇跡」と、 “青空写真展”に至るまで島の「軌跡」。二つの「キセキ」を世に送り出すべく開催されるのが今回の写真展だ。

「写真展では約90枚の写真を展示する予定です。現地の写真展を追体験できるように、ロープを張って写真を吊るす仕掛けも考えています。漁師針をキルト針に持ち替えた島の人たちの生き生きとした表情にも注目してほしいですね」(大輔さん)

「天使の小径の写真展」の様子(撮影:熊切大輔)
「天使の小径の写真展」の様子(撮影:熊切大輔)

 ところで、切大輔さんといえば、地元・東京を舞台にしたスナップ写真の作品をライフワークにしている写真家だ。近年では、コンクリートジャングルに“生息”する作り物の動物たちの姿を収めた写真展「東京動物園」や、身近ながら見逃しがちな都市生活の瞬間を収めた写真展「刹那 東京で」などを開催。決定的瞬間に宿る悲喜劇をどこかシニカルに捉える作品が印象的なのだが、当の大輔さんはどう考えているのか。

「東京とはまるで真逆なんですよ(笑)。たとえば街の風景だと、東京ではビルがスクラップ&ビルドを繰り返していて変化が激しいですが、島ではそこまで大きな変化はない。人の足に注目しても、都会では颯爽とした動きをしていますが、島の人々の足は土にまみれ、しっかり根が生えている感じがします。でも、時代とともに人も街も島も変わっていきます。ちょっとした変化を捉えられるのが写真の魅力なんですよね」

 文字では伝えきれない、環境の変化を記録する。プリント写真に写る自身や親、子、きょうだいの姿に微笑みを浮かべる――写真が持つ魅力の原点を思い起こさせる写真展になりそうだ。
                       (AERA dot.編集部)

【MEMO】
熊切圭介・熊切大輔写真展「カオハガン島 天使の小径の写真展」
10月23日~11月4日 オリンパスギャラリー東京
11月13日~18日 オリンパスギャラリー大阪
いずれも10~18時(木曜休館)

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