近年さまざまな分野で注目を集めるAI(人工知能)技術の利用範囲は、芸術の分野にまで及んでいる。中でも音楽制作では、作詞・作曲・歌唱まで全てAIを用いて行うことができる。音楽制作を通じたAIと人間との関わり合いについて、3人の専門家に話を聞いた。(東大新聞オンラインより転載)
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■曲のイメージから歌詞を生成
──ブルーの川をきらり染める 黄金がブルーに照らす時 白い川と落ち合うバラード 初夏のりんごが憧れそうで
これはアイドルグループ「仮面女子」の楽曲『電☆アドベンチャー』の歌詞の一部抜粋である。一見すると普通の歌詞に見えるが、よく読むとなんとも不思議な内容だ。実は、電☆アドベンチャーの歌詞は全てAIを用いて作詞されている。作詞AI開発者の坂本真樹教授(電気通信大学)に詳しく話を聞いた。
坂本教授の研究テーマの一つは、単語の持つイメージを数値化し、色で可視化するAIを作成すること。この技術を作詞に応用して生まれたのが電☆アドベンチャーだ。最新技術の展示会で仮面女子メンバーの月野もあさんと知り合ったのがコラボのきっかけでした」と坂本教授。イメージを色で可視化するAIに興味を持った月野さんと、共同で何かできないかと話し合った結果、AIで作詞に挑戦する「AI仮面プロジェクト」が実現した。
電☆アドベンチャーは仮面女子の楽曲『超・アドベンチャー』のメロディーの上に、AIが原曲のイメージに合わせて生成した歌詞を充てることで作られた。作詞の出発点は歌のイメージの読み込みだ。
「仮面女子のメンバーたちに原曲のイメージイラストを描いてもらい、コンピュータに読み込ませました」
次の段階では、坂本教授の開発した、単語のイメージと色を結び付けるAIでイメージに合致する単語を生成した。これまで単語のイメージを色に変換するために使うことが多かったが、このプロジェクトでは読み込んだ色から単語を生成するという逆向きの方法で利用した。