世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。
■行きつけの店が略奪の被害に…
米国で広がる人種差別反対運動「Black Lives Matter」(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命も大切だ)は、いまだに続いている。抗議運動の初期には、どさくさに紛れて全米各地で略奪が起きた。
コロナ禍でのステイホームの反動もあったのだろうが、抗議とは関係ない違法行為は到底容認できない。インスタグラムを見ると、私のお気に入りブランド「SUPERARE」(スーパーアール)というニューヨークのブランドのロス支店も略奪の被害にあったというのだ。
「SUPERARE」とは、格闘技用品などを扱っているアパレルブランドだ。世界各地の熱狂的なファンから人気を集めており、私もニューヨークで商品を買ったこともあった。そのSUPERAREに暴徒が踏み込んだ様子がインスタグラムで公開されていた。非常に胸を痛めたが、その次の投稿を見てさらに驚いた。
そこには、壊された店のシャッターを直し、略奪で飛び散った商品の一部を店の中に放り込む通行人の姿があったのだ。
今回の騒動で、略奪者は抗議者とは無関係であり、しかも少数だと言われていた。そのことを体現するような投稿である。
そしてロスの友人からは別の動きも教えてもらった。
「商品が盗まれて、空の箱だけがそこら中に落ちていました。次の日、近くの住民たちが片付けていました」
そう言って送られてきた画像には、大量の箱がゴミ袋に詰められ整然と並べられていたのだ。
アメリカでは自分の家の前や近所の路上だからと率先して片付けるようなことはあまりない。道路掃除といえば、業者がやるものと相場が決まっているのだ。この片付けには「自分たちで街をきれいにする」というただならぬ意思が感じられた。
暴動には、人の恐ろしさが現れる。だが、そんな状況をなんとか収めるのも人ななのである。そのことを目の当たりにし、救われる思いがした。(文/丸山ゴンザレス)