
一方イワヰさんは南海ホークスのNHマークがベストデザインという。Hを電車の車軸に見立てた南海の象徴ともいえるこの帽子マークは59年に登場。ダイエーに身売りする88年まで使用され続けた。
「NとHのバランスが絶妙なんです。普通NとHを重ねようとするとNの斜めの部分とHの横棒の間に隙間ができるんですが、このマークはNの斜めの部分を太くすることで隙間がありません。これは簡単なようで実は難しいんです」
文字を重ねることで新たな文字になるようなデザインが好きだというイワヰさん。
「重ね文字はちょっと線の太さを変えるだけでバランスが悪くなります。76年に太平洋クラブライオンズが採用したTとLのマークもロサンゼルス・ドジャースっぽくて好きなデザインです」

帽子マークのイラストはすべて写真から起こしている。今回いちばん苦労したのは昔の写真でマークが不鮮明なものが多かったことだという。綱島さんとイワヰさんは、不鮮明なモノクロ写真を1点1点細かく分析。地道な作業を積み重ね、野球帽に焦点を当てた初めての図鑑を完成させた。
「かつては大人がかぶる帽子と言えばソフト帽やベレー帽でしたが、いまは大人たちも野球帽を被るようになりました。私にとっても野球帽は子供のころから身近にあり、思い入れも深いアイテムです。その思い入れや知識をこの一冊にまとめました」
綱島さんの思いが詰まった『野球帽大図鑑』。野球ファンならぜひとも本棚に加えたい一冊だ。