「はじめは自宅で料理を楽しんだりしていた。でも、この機会にパンを作る人が増えて、小麦粉などの粉系は売り切れが出始めている。買い占めに加担している気がして、料理は気持ちが乗らなくなってきたんだ。そんな時、各種業界がセールを始めたんだよ。アウトドア用品のブランドが 50%offを打ち出したり、あるドーナツチェーンではドーナツ12個が無料なんだ。といっても、なかには医療従事者応援のため、その業種の人専用のディスカウントだったりもするけどね」

 多くの企業が救急、消防、病院、警察などの「First responder」と呼ばれる人に対して“特別ディスカウント”を実施しているようだ。スターバックスではコーヒーを無料提供していたという。

「あとは、今だからこそ味わえる楽しみを見つけるようにしているよ。たとえば普段は行列で入れないラーメン屋に行って、テイクアウトするとかね」

「え、ラーメンを?」

 思わず突っ込んでしまった。

「スープと麺を容器をわけて持ち帰ることができるから、麺がのびないんだ」

 置かれた環境を前向きに楽しむこと。終わりの見えないコロナ禍で、多くの人が苦しんでいるが、やはりそうした先にこそ希望があるのかもしれない。(文/丸山ゴンザレス)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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