
最近でいうと、千葉県松戸市で自作の野菜を使ったレストランを始めた30代夫婦を取り上げた回がそうです(22年6月25日放送)。その1年前、同じ松戸市内で祖父母が暮らしていた家を改装し、誰でも使えるレンタルスペースを始めた60代の女性を取材していました。当時、そのスペースを借りて出店していたのが当のご夫婦です。放映から少し時間が経ち、「実店舗を出した」と連絡をいただいたことが取材を始めるきっかけになりました。
──松戸市のご夫婦を含め、最近は関東圏の、比較的若い方々が取り上げられることが増えているように思います。
コロナ禍が大きく影響しています。最初の緊急事態宣言が出た20年当時は、実の息子や娘ですら帰省を止められていた。ましてや遠方からの取材となると、なかなか受けてもらえませんでした。感染リスクも考慮して、現在は関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)の1都6県と山梨県に取材地域を絞っています。
年齢も同じです。もともとは50代を中心に取材していたのですが、撮影がきっかけで万が一クラスター感染が発生した場合、高齢者ほど重症化のリスクが高くなってしまう。制作を安全に進めるためにも、取材対象の世代を広げることにしました。いま通っている企画は、最も若くて30代後半あたりからです。
──コロナ禍という危機も経ながら、現在まで20年以上にわたって番組の人気が続く理由をどう考えますか。
「奇をてらっていない」ことは大きいと思います。テレビには特殊な才能を持った人が出てくることが多いですが、この番組でが取り上げるのは、いわゆる「普通」の方々です。日々の生活に、特別な事件やサプライズが起こるわけではありません。誇張したりドラマチックに見せる「煽り」演出も入れたりしないように気を付けています。
変わった素人を紹介して一時的に人気になる番組もありますが、対象が尽きたり、視聴者に飽きられたりして終わってしまうことも多い。この番組の場合、普通の人の普通の生活を取り上げているので、対象は尽きませんし、視聴者からも飽きられにくい。特別な演出を排することが、結果として普遍性へとつながっている部分はあるのかなと思います。