世界各地でゲリラ的に出没し、話題をかっさらう正体不明のストリート・アーティスト、バンクシー。名前はテレビやネットで目にするものの、その存在については詳しく知らないという人も多いのではないでしょうか。
また、バンクシーについて多少は知っているという人も、「なぜ正体を明かさないのか?」「誰がバンクシーを支援しているのか?」「一流の芸術家なのか、それとも壮大な詐欺師なのか?」といった疑問には、なかなか明確に答えられないのではないでしょうか。
こうした謎に迫ったバンクシーにまつわるガイドブックの決定版ともいえるのが、『バンクシー アート・テロリスト』です。本書は「はじめに」で、東京の日の出駅付近で見つかったバンクシーの作品かもしれない絵、そして日本メディアでも大きく報道された「シュレッダー事件」を取り上げ、日本とバンクシーとの関わりを紹介しつつ読者の興味を誘います。
そうして、第一章「正体不明の匿名アーティスト」、第二章「故郷ブリストルの反骨精神」、第三章「世界的ストリート・アーティストへの道」、第四章「メディア戦略家」、第五章「バンクシーの源流を辿る」、第六章「チーム・バンクシー」、第七章「表現の自由、民主主義、ストリート・アートの未来」といった章立てで、バンクシーの全体像にさまざまな角度から迫っています。
たとえば、先にも挙げた「バンクシーはなぜ正体不明のまま活動するのか?」という問題。これは第一章に詳しく書かれていますが、一つの端的な答えとしては「グラフィティという行為が多くの国に置いて『犯罪』、あるいは『非合法』と考えられているから」。グラフィティとは壁などに描かれた落書きのことで、あらかじめ許可を与えられた場所や依頼された場所に作品を描く合法的な作家もいますが、バンクシーは「イリーガル(非合法)」の作家。もし身元が特定されてしまったら、過去の仕事のために逮捕されたり、今後の活動が制限されたりする可能性があるというわけです。
とはいえ、正体不明のままに世界を股にかけてこれだけ大規模な活動をするというのはどう考えても難しい。となると、そもそもバンクシーとは一人なのか、彼の活動の支援や広報はどういった人たちがおこなっているのか、といった疑問も出てきて、なおさら「バンクシーの正体とは?」という答えを知りたくなるはずです。そうした謎について本書では、今の時点で世の中に出ている情報から、最大限にわかりやすく、詳しい情報を読者に与えてくれていることと思います。
2020年3月15日から9月27日まで横浜アソビルで「バンクシー展 天才か反逆者か」の開催も予定されており、日本では今後もまだまだ新たなファンを増やしていくであろうバンクシー。ぜひ本書を読んでその全体像に迫り、皆さんなりの解釈を見つけてみてください。
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