●競争が激しい韓国タレント市場

 1人あたりのGDPで韓国は日本に迫りつつあるが(文在寅政権の失政で遠のきそうだが)、個人消費が大きな日本と比べると韓国は輸出依存であり、人口も日本の半分以下、国内市場は日本よりかなり小さい。それはアイドル市場においても同じだ。

 日本のアイドルは国内で成功すればそれなりの収入が見込めるが、韓国は市場が小さいので成功しても高収入が得られるとも限らない。

 また競争が激しく、その成功がどこまで続くかもわからない。日本を初めとする外国市場に目が向くのは当然だろう。

 韓国のアイドル業界が日本のような「アイドル=未成熟の一生懸命」にとどまらず、エンターテインメント性を高めたのは、1つには外国市場に打って出る必要があったからだろう。

 ただし、アメリカ的な「完成度」だけでなく、日本同様に「若さ」「可憐さ」なども求められており、日本とアメリカの両方の側面がある。

 そのため、タレントを目指す韓国人は、幼い頃から専門の養成所で訓練を積むと同時に、女性アイドルや女優として広く活躍できるのは30歳までといわれていて、できるだけ早くデビューさせようとする。

 日本にも同じようなシステムがあるが、韓国は貧富の差が激しく階層がいくぶん固定化されているので、「一発逆転」を狙うために、人気タレントになることは、はるかに切実な目標になりうる。日本のように「娘がアイドルになりたいのだから、好きな道を行かせる」といった感じは薄く、中には「一家を挙げて、この子に懸ける」といった悲壮さを伴うことも珍しくない。

 また、芸能プロ側も、オーディションで人材を集めたら、お金をかけて徹底的に鍛え上げる。芸能プロにとってアイドルは投資対象であって、デビューさせることは投資の回収でしかない。それだけに、いったん所属すれば契約でがちがちに拘束してほかに逃げないようにし、できるだけ大きな市場で活躍してもらわなければならない。

 韓国の場合、「アイドル」とはいっても、パフォーマンスにおいて日本よりはるかに高いレベルを目指すので、それだけコストも本人への負担も大きなものになる。

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