「警察を呼ぶ」「データを消せ」。カメラを手にして歩いているだけで不審者扱いもされかねない時代。路上スナップ撮影を怖いと思っている人は少なくありません。もしも実際にトラブルに直面したら? 回避策は?『アサヒカメラ11月号』では、「スナップは怖くない」と銘打ち、8人の写真家が明かす設定や極意から、路上撮影トラブルの実践的対応術までを72ページに渡り大特集。
今回は、前回の記事「プロが教える スナップ撮影に向くカメラの選び方」に続き、「スナップはすべての写真の基本」と語る写真家の大西みつぐさんが解説する“いまさら聞けない”スナップ撮影の基本編「レンズ選び」をお届けします。
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レンズを変えると、明らかにスナップ写真が変わります。
慣例として焦点距離50ミリ前後のレンズを「標準レンズ」と呼び、それよりも画角の広いものを「広角レンズ」、狭いものを「望遠レンズ」といいます。
ちなみに木村伊兵衛さんやハービー・山口さんのように、昔から標準レンズとつき合っていた人は50ミリのよさをきちんとわかっていたと思います。
でも、ぼくの写真学生時代、50ミリで撮ることが面白いとは思わなかった。なんだか、魅力がなかった気がします。
当時は雑誌ジャーナリズム全盛期で、秋山忠右さんの教えもあったのでしょうが、スナップ写真といえば、20ミリや35ミリなどの超広角、広角レンズという時代がかなり長かった。
もちろん、これには理由があります。そのころはスナップ写真、イコール、動きの瞬間を写すんだ、という方向性に強くしばられていました。ワイドレンズであれば、ある程度絞り込むことで被写界深度が深くなり、ピンボケの心配なく動く人の姿を写せて都合がよかったわけです。
二十歳のころはミノルタSRT101に21ミリをよくつけて撮っていました。別売の外付けファインダーをアクセサリーシューに装着して、「レンジファインダーもどき」の感覚で写していました。