『鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』鴻上 尚史 朝日新聞出版
『鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』鴻上 尚史 朝日新聞出版
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 朝日新聞出版のニュース・情報サイト「AERA dot.」で人気の連載「鴻上尚史のほがらか人生相談」が、このたび一冊の本になりました。このコーナーは、劇作家・演出家の鴻上尚史さんが毎回、読者から寄せられたお悩みに答えるというもの。

 これまで「神回答!」としてSNSなどで拡散されることも多々ありましたが、それだけ反響を呼ぶのはなぜかといえば、ひとえに鴻上さんの"相談者に優しく寄り添う姿勢"。これに尽きると思います。

 たとえば、鴻上さんはよく、回答の中で「〇〇さん」と相談者に呼びかけます。「どうですか、えみさん」「ナツメグさん、大変でしたね。苦労していますね。よく、相談してくれました」など、まるでその人がすぐそばにいるかのような距離感で話しかけるのです。中には「でね、きーやん。生ビールをお代わりしながら聞いてくれる?」なんてケースも。がやがやした居酒屋で、ビール片手にざっくばらんに語り合っている光景が頭に浮かんではこないでしょうか?

 そしてもう一つ、けっして自身の意見を押し付けようとしないところにも、鴻上さんの温かな眼差しを感じます。例を挙げると、「専業主婦の妻が、突然働きたいと言いだしました。突然の方向転換はルール違反じゃないでしょうか?」という41歳男性からのお悩み相談。最初に夫婦で決めた約束を破ろうとしているのはたしかに妻側のルール違反であるとしながらも、「問題は、あなたが『ルール違反』を認めるか認めないかなのですよ。人生には『ルール違反』はつきものだと思うか、『ルール違反』は絶対に許さないと思うか、ですね」「ひょっとして、奥さんの『ルール違反』から、楽しいことが起こるかもしれません。奥さんが生きがいを感じていきいきして、子供達もそういう母親を見て、喜ぶかもしれません」と続けます。そして、「怒らないで、いろいろと奥さんと話し合って下さい」「離婚を考えてないなら、そうした方がいいと思います」とアドバイスします。頭ごなしに怒ったり突き放したりせず、あくまでもフラットな目線で相談者の思考の枠を広げてくれるのが鴻上流といえるかもしれません。

 本書には全部で28の相談を掲載。「個性的な服を着た帰国子女の娘がいじめられるそうです。ふつうの服を買うべきですか?」「SNSを辿って、彼女が整形をしていたことに気づいてしまいました。なんだか騙された気分です」といったように、割と軽めのものからヘビーなものまでさまざま。鴻上さんがこれらのお悩みにどう答えるのか、皆さんもぜひ本書でご覧になってみてください。