以前の記事「“危険な暑さ”は鉄道にも大敵…レールが伸びる!?」の解説でも触れたが、最近は1本のレールが長いロングレールを使用する路線が増えている。JR貨物も2015年から150メートル長尺レールの国内輸送を行っているが、なぜ長いレールを導入したのか、そして1両の貨車よりもずっと長いレールをどうやって運んでいるのかを、輸送中の写真とともに紹介する。
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■もともとは、全てが長いレールだった!
レールは、長さ25メートルのものを「定尺(ていしゃく)レール」、50~200メートルのものを「長尺(ちょうしゃく)レール」といい、200メートル以上のものを「ロングレール」と呼んでいる。以前は定尺レールを溶接してロングレールを作っていた。しかし、レールは鉄を押し伸ばして加工する圧延鋼なので、実際には製鉄所で1本あたり100~150メートルで製造され、それを輸送しやすいようにわざわざ25メートル、または50メートルにカットしていたのである。
ロングレールの使用は軌道上の弱点である継ぎ目を減らすことができるが、溶接箇所があればその管理も必要となる。そこで、その溶接箇所をも減らす方法として、製鉄所で製造された150メートルそのままのレールを輸送して、現場に敷設することになった。
日本製鉄(2019年4月に新日鐵住金から商号変更)八幡製鐵所では、海外(主に北米)向けのレールを製造しており、150メートル長尺レールをそのまま積載できる専用船を就航させ、150メートルレールの輸出を行っている。そこでJR貨物も150メートル長尺レール輸送用の貨車を開発。2015年3月ダイヤ改正からは、東海道新幹線用の150メートル長尺レールをJR東海浜松レールセンターへ輸送している。
それまで浜松レールセンターでは50メートルレールを200メートルのロングレールに加工していたが、150メートル長尺レールの受け入れと同時に溶接職場を廃止することで、コストダウンと溶接箇所低減の一石二鳥の効果が得られた。2016年4月からはJR西日本の山陽新幹線、JR東日本の東北新幹線と在来線に向けた輸送も開始されている。