週に7時間も地上波でプロレス放送が流れていた時代があった。だが当時は一度見逃すともう一生見られない(と信じていた)。その切実さが、昭和のプロレス少年たちの記憶を色濃くしている。
著者は会社員の傍ら、編集、翻訳などを手がけたプロレス執筆の第一人者。18歳から24歳までアルバイトで国際プロレスの事務所や試合に出入りし、同プロレスを「魂のふるさと」と呼ぶ。その「東京12チャンネル時代」(1974年から81年)に限定した内幕リポートを還暦を過ぎて書き上げた。
団体の内情を記した「田中メモ」に基づき、放映権やギャラ、団体同士の暗闘などの裏事情を描き、国際プロレスが崩壊に至った理由に迫る。行間から愛と情熱が、そしてこれを書かずに死ねるかという気迫があふれる。
※週刊朝日 2019年8月30日号