日本中のあらゆる市民団体が抱える悩みは同じである。すなわち若い人がいない! どんなデモでも集会でも参加者はほぼ中高年。いったいどうしたらいい?
富永京子『みんなの「わがまま」入門』は中高生にむけて「社会運動」の意義を説いた本である。デモ、署名活動、シンポジウムなど、10代にはハードルが高い行動の意味をわかっていただくためのキーワードが「わがまま」だ。
<だれかを「ずるい」と思うことも、不満や違和感を公(おおやけ)にする人に対して「わがまま」と感じることも、よくあることだと思います>。しかし<その人の「わがまま」が、その「わがまま」を言った人にとどまらず、じつはある程度多くの人に共通する事情だとしたらどうでしょうか>。
日本が30人の教室だとしたら、ひとり親世帯の人は2人、発達障害の可能性がある人は2人、LGBTの人は3人、貧困状態にある人は5人、世帯年収1千万円以上の人は3人、外国籍の人は1人。つまり<「クラスのみんな」は、すこし見方を変えれば、このくらい異質な人の集団>で、<みなさんがイメージする「ふつう」は相当無理して維持されている>ってこと。<だからこの本は「わがまま」を推奨します>
正直、冗長な部分がないわけではない。が、こういう本の大きな価値は「若者たちへの語りかけ方」を大人にも教えてくれる点である。<批判するなら何か別の案を出せよ>、社会のためとか<意識高いよね(笑)>といった周囲の声への対処の仕方も伝授。私には<うまくいくまでやる必要はないし、それを自分がやる必要はない>という提言が新鮮だった。社会運動は失敗の連続だ。<自分を変えることそのものも、社会運動と言えるんじゃないか>。<何かが大きく変わらなくても、行動する人やその周りの人にとって何か変化があれば、それはその人にとって、社会運動をする意味になるのです>
<そんなことをやっても社会は変わらねーよ>という悪口への鮮やかな回答。若者の参加不足にお悩みのみなさまもぜひ。
※週刊朝日 2019年6月28日号