
トヨタ自動車やパナソニックといった大手企業が駐在員を増やしているのはもちろん、柴田さんのように個人での起業も目立つ。日本人が現地で起こした会社は、11年の25社から21年には79社と3倍以上に増えているのだ。神戸大学の佐藤隆広教授(現代インド経済論)は、
「大きな夢を抱いてインドで起業したけれど、コロナによって断念せざるを得ない人たちがいた。けれど、日本に戻って法人を作るなどして足場を固め、インドに再復帰しつつある」
と現状を説明する。
■世界5位の経済大国
インドは、中国などとともに新興5カ国(BRICS)の一つで、国内総生産(GDP)は世界5位の経済大国だ。人口は13億9341万人(21年)で、国連が7月に公表した「世界人口推計」によると、早ければ来年にも中国を抜いて世界最多になるとされている。
「今まさに世界で一番活気がある国。同じ起業するにしても、インドでやると、日本でやるより値打ちが上がる」(佐藤教授)
不衛生で危険、多宗教で多言語、格差と差別のある混沌(こんとん)とした不思議な国。そんなイメージの転換が、ビジネスの面では日々加速している。(編集部・古田真梨子)
※AERA 2022年12月19日号より抜粋
