食を通じて見るアメリカ社会史。生半可な政治史などよりも、この国の輪郭が手に取るように伝わってくる。
ポップコーンが先住民に、フライドチキンが黒人奴隷を経由してアフリカに起源を持つことをご存知だろうか。多民族国家であるこの国の食は、最初から「混血料理」であることを免れなかった。
土着性と国際性が同居していたクレオール料理の豊かさ。そうした多様性や健康への意識こそが、産業社会化が進展する中で変質し、利便性と収益性を重んじる画一化されたファーストフード帝国を築きあげる礎になってしまったという皮肉。しかしそれに異議申し立てをしたヒッピーたちの反抗精神が、形を変えて今も息づき、多様性や食の安全を取り戻そうとしている。
アメリカ理解の大きな助けとなる一冊。(平山瑞穂)
※週刊朝日 2019年6月14日号