高い建築物を下から見上げるアングルで撮影。いかにも28ミリレンズらしい再現性。新しい建築物ならばこの手法は使えるが、古い建物では不自然な表現に見えることがある。単にパースペクティブが強い表現では見飽きてしまう可能性も●EOS R・EF28mm F2.8 IS USM・AE(絞りf11・3200分の1秒)・ISO400・AWB・RAW
高い建築物を下から見上げるアングルで撮影。いかにも28ミリレンズらしい再現性。新しい建築物ならばこの手法は使えるが、古い建物では不自然な表現に見えることがある。単にパースペクティブが強い表現では見飽きてしまう可能性も●EOS R・EF28mm F2.8 IS USM・AE(絞りf11・3200分の1秒)・ISO400・AWB・RAW

 その昔、35ミリ判カメラの交換レンズの三種の神器は28/50/135ミリだった。それぞれに広角や望遠の効果がはっきりとしてくる焦点距離であり、開放F値に無理のない一般的なレンズタイプのものなら廉価に販売されていたこともある。今回は28ミリ広角レンズの話だが、現在この28ミリは注目されない地味な存在にもみえてしまい少し悲しい。

ニコン AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G Fマウント用の最新F1.8単焦点レンズシリーズの中では一番のオススメ。0.25メートルの最短撮影距離もいい。せっかくなので、もう少しデザインを凝ってくれればと思う。税込実売8万8970円
ニコン AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G Fマウント用の最新F1.8単焦点レンズシリーズの中では一番のオススメ。0.25メートルの最短撮影距離もいい。せっかくなので、もう少しデザインを凝ってくれればと思う。税込実売8万8970円

 これは勝手な推測なのだが、28ミリレンズが地味な存在になったのは、時代を経るごとに標準ズームが35~70ミリに、28~70ミリに、そして24~70ミリにと広角域側に拡大していったからではないか。つまり、標準ズームレンズの中に焦点域(画角)が吸収されてしまうと、途端に同種の焦点距離の単焦点レンズの存在が希薄になるように思えるのだ。

キヤノン EF28mm F2.8 IS USM 本特集でも多用した。小型・軽量・高性能。手ブレ補正内蔵なので、微光量下でも問題なく使える。EOS Rにもなかなか似合う。こうした地味なレンズを用意していることに敬意を表したい。税込実売5万8660円
キヤノン EF28mm F2.8 IS USM 本特集でも多用した。小型・軽量・高性能。手ブレ補正内蔵なので、微光量下でも問題なく使える。EOS Rにもなかなか似合う。こうした地味なレンズを用意していることに敬意を表したい。税込実売5万8660円

 さらに超広角レンズの設計が容易になってきたためか、一般的な写真や映像でも超広角レンズによるダイナミックなパースペクティブ効果を生かした作品を日常的に見られるようになったことも理由としてありそうだ。つまり、われわれは知らないうちに超広角域の画像に慣れてしまい、28ミリクラスでは、画角もパースペクティブも物足りなくなってしまっているのではないのか。

シグマ 28mm F1.4 DG HSM|Art 作り込み、性能面、価格でも純正レンズと真っ向勝負して勝利する勢いを感じる名玉。少々F値は暗くてもいいから
シグマ 28mm F1.4 DG HSM|Art 作り込み、性能面、価格でも純正レンズと真っ向勝負して勝利する勢いを感じる名玉。少々F値は暗くてもいいから

 神器たる28ミリの地位が危ういようにも見えるが、一眼レフ、ミラーレス機ともに28ミリ単焦点の交換レンズを用意しているメーカーは多い。カール ツァイスとシグマ、ニコン、ライカカメラでは開放F1.4の大口径レンズをラインアップしているし、ソニーやコシナのフォクトレンダーはF2のレンズがある。ライカレンズには、ほかにF2/F2.8/F5.6の明るさも用意され4種類もある。キヤノンはF2.8と明るさは平凡だが手ブレ補正(IS)内蔵の単焦点小型・軽量レンズを最近になって用意したし、パナソニックでは14ミリ(35ミリ判換算28ミリ相当)F2.5の超小型・軽量レンズが、富士フイルムには18ミリ(35ミリ判換算27ミリ相当)F2のパンケーキレンズがある。

ライカカメラ ライカ ズマロンM f5.6/28mm オリジナルは1955~63年製造。地にうすく入る写真はその当時のもの。現代のレンズとは違ったクラシックレンズらしい写りだ。税込実売34万5600円
ライカカメラ ライカ ズマロンM f5.6/28mm オリジナルは1955~63年製造。地にうすく入る写真はその当時のもの。現代のレンズとは違ったクラシックレンズらしい写りだ。税込実売34万5600円
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28ミリレンズの万能性