本書を執筆中にホーキング博士は死去した。「ビッグ・クエスチョン」とは、「神は存在するのか?」「ブラックホールの内部には何があるのか?」「タイムトラベルは可能なのか?」など10の問いだ。
現在的な問題として興味深いのは「人工知能は人間より賢くなるのか?」だ。物理学や宇宙論の知見では解けない問題に、独特の知的洞察で向き合う。AIの短期的影響は「誰がそれをコントロールするか」で、長期的影響は「そもそもコントロール可能か」だと博士。火を使い始めた人間は何度も痛い目に遭って消火器を発明した。だが、「核兵器や合成生物学、強い人工知能」には何回もの「痛い目」は存在せず、チャンスは一度だけかもしれない。人間の知恵はテクノロジーを確実に制するのか。楽観的にも、悲観的にも受けとれる結論だ。(中島鉄郎)
※週刊朝日 2019年4月19日号