五箇条の御誓文、治安維持法、国家総動員法、日独伊三国同盟、ポツダム宣言、玉音放送、日本国憲法など教科書で存在を知っていても、実際に読んだことがある人はほとんどいないだろう。

 本書では、近代の日本を形作った条約の条文や宣言文や法律に何が書かれているのかを、わかりやすく読みといている。全部で22の言葉を取り上げ、それぞれの背景や現代語訳を添えた。言葉ごとに、思想研究者と気鋭の評論家が対談形式で解説し、歴史的意義も学べる。

 近代史の資料集や評論集はこれまでもあったが、本書のように手軽に読める形で両方を兼ね備えた本はなかった。気になる頁や項目から読めるていねいなつくりにもなっている。これまで遠くに感じていた歴史的事象を身近に感じられるはずだ。(栗下直也)

週刊朝日  2018年12月21日号