「ええか、障がいがあるからいうて、下向いてたらあかへんで、前向いて生きなはれ」「この世に生まれたお役目があるんどす」。膝枕で聞いた明治生まれのおばあちゃんの言葉だ。

 おばあちゃんの家は小さな酒屋で、壁のトタンが剥がれ雨が部屋に降り込んでいた。貧乏だったが、おばあちゃんは毅然としている。「金持ちや強いやつにまかれたらあかん、こびへつろうたらあかん」。おばあちゃんの愛情はヒリヒリするほど感じた。そんなおばあちゃんに育てられた私は「100万人に1人」の稀な障がいをもってこの世に生を受けた。

 私の父は大工、母は着物の絵描きだ。そして私はデザイナーになった。20年近く企業に勤め、2002年に「アトリエ インカーブ」(以下、インカーブ)を立ち上げる。社会福祉法人素王会(そおうかい)のアートスタジオとして設立したインカーブは、知的に障がいのある方たちの創作活動の環境を整え、彼らが現代アーティストとして独立することを支援している。インカーブは知的に障がいのあるアーティストとソーシャルデザイナーが協働する、わが国では稀な組織である。

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 いつかデザインと社会福祉を架橋する「ソーシャルデザイン」のことを本に書きたいと思っていた。ソーシャルデザインというツールを使って、水と油だと思われているアートと福祉、市場と社会福祉、障がい者と健常者の関係をシャッフルしたら、社会に「希望」が見つかるのではないか。

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