――バークスの役作りのポイントは「キャラクターの立場になって考える」ことと言う。
キャラクターと自分の似ているところ、似ていないところも把握します。似ているところに関しては自分ときちんと絆をつなげていく。似ていないという特徴があった場合は、キャラクターと同じような状況になった場合に私はどうなるのか、どう共感していくのかを考えて作っていきます。キャラクターから学ぶことも非常に多いです。ミュージカルは一つの役をいただくと、6カ月から1年間ずっと演じ続けることになります。そうするとキャラクターが自分の中で息吹(いぶ)き続けることがある。こうしてはいけないとかこうするべきだとか、そんなところも含め、自分の肉になっていくことがあります。
それと、私の演じるキャラクターは、欠陥のある人が多いように思います。こうしてはいけないということを学びながらも、同時にそのキャラクターに感動する自分も出てくる。例えば、今演じているエルサは、とても恐れ知らずですが、不安もたくさん抱えているという人。そういうところは、ずっと演じ続けていると、自分の中に残ることが多くなります。
――子どものころから歌が好きで「ポップスターになりたい」という夢を抱き、ミュージカル曲をよく歌っていた。バークスにとっての人生の転換点は2010年のミュージカル「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役だと言う。
初めてウエストエンドでいただいた役でもありますし、この舞台に出た数年後に、ハリウッド映画の「レ・ミゼラブル」にも出演することができました。驚くような体験でしたし、それ以降もアカデミー賞でパフォーマンスをするなど様々な冒険をさせていただきました。
この業界にいると、いい意味で常にサプライズがあると思うんです。私は舞台でも映画でも、特定のゴールを掲げていはいません。先を見越したプランを立てにくいこともありますが、今後もただ、面白いキャラクターを演じ続けたい。あるいは、みんなが一堂に会してクリエーティブなプロセスを経て作り上げていく。新しいオリジナルものを作るところに関与していきたいと思っています。驚きを楽しみながら冒険も楽しみたいと思っています。
(聞き手 ライター・坂口さゆり)
※週刊朝日オンライン限定記事
<サマンサ・バークス>
1990年、イギリス・マン島生まれ。2010年ロンドン・ウエストエンドデビューして以来、「オリバー!」「シカゴ」「アメリ」「プリティ・ウーマン」など数々のミュージカルでヒロインに。20年、ラミン・カリムルーと共演したミュージカル「CHESS THE MUSICAL」で初来日。主な映画出演作に「プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード」(17年)ほか。
映画「トゥモロー・モーニング」
ロンドンで運命の出会いを果たし、結婚式を明日に迎えたキャサリン(バークス)とビル(カリムルー)。人生を共に生きることを誓った二人だったが10年後、彼らは離婚調停を明日に控えていた……。世界最高峰のミュージカルスターの二人が圧倒的な歌唱力で魅せるミュージカル娯楽作。全国順次公開中。