高プロ制度についての政府の公式な説明はこうだ。

「高プロ制度は、時間ではなく成果で評価される働き方を自ら選択することができて、高い交渉力を有する高度専門職に限って、自立的な働き方を可能とする制度。健康確保しつつ、効率的に成果を出す働き方が可能となる」(4月27日、衆院本会議、加藤勝信厚労相の答弁、一部略)。

 政府の説明や制度の適用条件をそのまま受け止めれば、「高プロ社員」は、そんじょそこらの普通の社員ではない。極めて高度な専門技能を持ち、あらゆる企業が高給を支払ってでも雇いたいと思うプロフェッショナル人材ということになる。

「高い交渉力を有する」とは、上司から膨大な業務を振られたら、「こんな会社では働きたくない。自分のことを高給で雇ってくれる会社は他にいくらでもあるから」と、すぐにでも転職できる自信がある人のことだ。

 雇用する会社側も「働く時間も場所も自由にどうぞ。成果は出してくださいね、よろしく」と、認める人材のことだろう。

 社員と企業との間でこうした関係性が成り立つ特定の社員に対してだけ高プロは適用可能になる。つまり、高プロ社員とは普通のサラリーマンとは別世界の話なのである。

●成果も上げずにだらだら働く人を排除する狙いが「本音」か

 しかし、経済界には、高プロをあえて「曲解」し、あたかも普通のサラリーマンにも関係があるかのように説明する経営者や担当者らがいる。

 そんな経済界の声を“代弁”するかのような論陣を張っているのが、『日本経済新聞』だ。

 まず、典型的な「曲解」記事を見てみよう。ちなみに、日経は高プロ制度を「脱時間給制度」と呼び続けている。
 
「長時間、会社にはいるものの、目立った成果を上げていないAさんと、夕方になるとさっさと引き上げるが、いつも成果を出すBさん。この2人のうちAさんの方が給料が多いと言われると多くの人が違和感持つのではないだろうか。働いた時間ではなく、成果に着目して給料を支払う『脱時間給制度』が実現すれば、この違和感は払拭されるかもしれない」(2017年7月25日付朝刊5面)
 
 この記事の隠れたキーワードは「残業代泥棒対策」だ。成果も上げずにダラダラと会社に残るAさんを“残業代泥棒”と位置づけ、「高プロ=脱時間給」が実現すれば、こうした問題は解決する、というのが記事の趣旨だ。この後には、「日本人の働き方を効率的に変えなければならない」といった主張が続く。

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「脱時間給制度」にこだわってきた経済界