彼は勉強し、資格を取得し、まず社内の仕事に活かし始めました。そのうち徐々に名前が売れていきます。まず、会社の外の業界で名前が売れ始めました。次いで会社の中でもその技能が重宝されるようになりました。上手く行っていないチームの立て直しや、後進へのファシリテーション技術の伝授などです。この段階で、実は彼が一度は諦めた、「どっこい負けず残り」もできたのですが、彼はその道を選びませんでした。

 数年を掛けて、彼は第2の人生の地歩を固めました。定年まであと数年を残す頃、計画通り会社を辞め、念願の私塾を開きました。辞めると言っても、ここが大切なところですが、スパッと辞めたのではなく、そっといつの間にかいなくなっている。そう、フェイドアウトしたのです。

●第2の人生にフェイドイン、第1の人生をフェイドアウトが極意

 【図】を見てください。左端は第1の人生で100%です。そこから第2の人生にフェイドインします。準備を積み、最初は手探りで地歩を固めていくのです。理想は、図に引いた対角線のように、2つの人生が徐々に入れ替わっていくことです。

 今いる会社の役職に固執して今の仕事だけしていて何の準備もせずに定年・再雇用終了を迎えたり、早期退職勧奨を断れない状況に陥ったりしたら、こうはいきません。第1の人生はブツっと音をたてて切れ、いきなり第2の人生がスタートします。多くの場合は第2の人生の準備が何もできていないため、第1の人生と第2の人生の間は分断されてしまいます。希望よりも不安、そして何よりリスクが大きい人生になってしまいます。

 会社の今の状況に固執せず、何らかの分野のプロフェッショナルになっていれば、そして、その専門性が今の会社でも役に立つとなれば、会社は辞めても仕事は残るという関係性さえ築けます。会社と緩やかな関係を保ちつつ、新たな人生をスタートさせることができるのです。スムーズなフェイドインとスムーズなフェイドアウトができるようになるのです。

 前職との人間関係が続くことはとても良いことです。場合によっては前職がクライアントの1つになるということです。

 図に3つの縦軸を引きました。A、B、Cです。これは退職を選ぶ3つのタイミングです。理想はC、8対2とありますが、これには割いている時間や心の中の比重なども加味しているのですが、簡単に考える場合は、第2の人生で稼げる収入が今いる会社で得ている収入の8割を得られるようになったら退職をするという意味ととらえてください。

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タイミングの見極めは今得ている収入の5割くらいの定職を決めよ