●果たして「逃げ勝ち」は難しいのか?
次は「逃げ勝ち」と「逃げ負け」の話です。
「逃げ勝ち」とは、会社の出世レースに見切りをつけて、自分で道を切り拓き成功することです。そして、「逃げ負け」とは会社は辞めたものの、その後なかなか上手くいかない、そんな状況です。会社に勤める多くの方は、「逃げ勝ち」はとても難しいことだと考えています。
もともと勤めている会社で社長になる芽はほぼないが、思い切って飛び出してもっと大きな会社の社長になる、などというのは確かに「逃げ勝ち」でしょうが、それはハードルを上げすぎというものです。
「逃げ勝ち」の“勝ち”はあくまでも主観的なもの、それも自分が決めた尺度での勝ち負けですから、実はそれほど難しくはありません。要は自分が「幸せだなあ」と思えれば勝ちなのですから、自分にとっての幸福の条件さえしっかりと認識していれば、「逃げ勝ち」は多くの人にとって実現可能なはずです。
もっとも、自分にとっての幸福の条件を自覚すること自体は簡単ではありませんが。
しかも、「逃げ勝ち」に定年はありません。いついつまでに勝たなければ手遅れというものではありません。そう考えると、勝つまで勝負を続ければいいのですから、早々に負けを認める必要もありません。
●「逃げ勝ち」の準備が「負けず残り」につながることも…
最後のどっこい「負けず残り」ですが、これもままあるケースです。
バリバリの営業マンとして成功している人がいました。その意味で、彼は会社の主流を歩いていたのですが、とにかく一途な性格で、決して器用なタイプではありませんでした。心あるお客様には信頼されとても可愛がられましたが、上司に取り入って上手く立ち回るなどということは大嫌いでした。さらに心の中はめちゃくちゃにハートフルで、愛と優しさに溢れた人です。その分、いささか感情が前に出るタイプでもありました。
その会社がある時、大々的なリストラを断行し、彼のそんな性格が災いしたのか、閑職に追いやられてしまったのです。彼は怒り狂いました。
「なぜ俺が?会社は何を考えているんだ?」