イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 村の教育長さんはじめ、村の方々が迎えてくれた。お差し入れもリンゴ、柿、日本酒・今錦(米澤酒造)、寒天スープ、コーヒー詰め合わせ……なかなかの重量感だったが、我が弟子がちゃんと東京まで運んでくれた。持つべきものは弟子である。

 なにより「中川寄席」と銘打った8年ぶりの落語会には、全村民と言っても過言ではない150名のお客様(村の人口4700人余りなので極めて過言)。老若男女がよく笑ってくれて、身体中の痛みも吹き飛び「再結成だ!」と腰と背中とケツが喜んでいた。落語会が終わり、この『日本で最も美しい』中川村に宿泊かと思いきや、「本日は岡谷泊まりになります」という非情な通告。「また来るよー!」と手を振りながら、復路もやはり70分……岡谷に着いたら22時30分。

 近所のコンビニでビールを買い込み、部屋で一人打ち上げ。身体がまたもや揉めだした。お前ら、仲良くしろや!翌日、何があったのか知らないがまたもや床にじゃがりこが散乱している、見慣れた景色。

 やはり見慣れた景色は落ち着くなぁ。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!

週刊朝日  2022年12月30日号

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