医療法人徳洲会は、鹿児島県・徳之島出身の医師徳田虎雄が自らの生命保険金を担保に建てた病院から始まった。すべての命を平等に扱う医療を志し、世界屈指の病院グループを一代で築いた。

 本書は徳田の元秘書や元徳洲会ナンバー2など周辺人物にもスポットを当てる。彼らは既存の医療への反発から徳洲会に合流し、いつしかグループと徳田のために泥沼の選挙戦や危険なマネーゲームに身を投じる。

 2013年、親族と徳洲会幹部らが衆院選での公職選挙法違反容疑で逮捕されると、徳田は表舞台から退いた。しかし、徳洲会が僻地医療や患者本位の医療を確立し、数多の命を助けたのは揺るがぬ事実だ。著者は徳洲会の狂騒を、関係者たちの「青春」という。徳田たちの理想を追いかけた日々を描く本書は、確かに青春群像劇だ。

週刊朝日  2018年4月6日号