しかもそれらのデバイスがキャッチした顧客の情報はアレクサを経由してアマゾンに流れる。アマゾンは自社のサービス以外からも顧客の行動履歴や好みなどの情報を入手できるのだ。そしてその情報はビッグデータになり、アマゾンによる「カスタマイズ」された情報提供に使われる。

 こうしたビジネスモデルは、今後、情報やサービスだけでなく「モノ」にまで発展していきそうだ。

 IoTに関する議論の中で「マスカスタマイゼーション」という言葉を最近よく耳にする。コンピュータやAIを使って、大量生産に近い生産性を保ちながら、個々の顧客のニーズに合う商品やサービスをオーダーメイドで生産することを指す用語だ。

 アマゾンはアレクサをベースにしたマスカスタマイゼーションに足を踏み入れようとしているのかもしれない。その手始めとしてアパレル業界に進出したようにも思える。

 アマゾンは、2017年にアレクサを搭載した「Echo Look」を発表している。このカメラ付きデバイスは、ユーザーが撮影した写真をもとに、どのファッションが似合っているかをアドバイスしてくれる。

 この延長線上に、「Echo Look」が集めた情報をもとに似合う服をAIがデザインして生産するような未来を描くのは、比較的簡単ではなかろうか。

 同様のことが、今後さまざまな業界で起こるとしたら。

 おそらくほとんどのメーカーやサービス提供者は、個別の顧客の意向をビッグデータやAIで予測する技術を磨き上げてきたアマゾンに追いつけない。ということは、世の中のほとんどの情報がアマゾンを経由してマーケティングや情報提供、サービスに生かされるようになる可能性だってある。

 そうなる前に、本書でアマゾンの長期的な戦略をよく理解し、自社がすべき対策を講じ始めたほうがいいかもしれない。

(文/情報工場シニアエディター 浅羽登志也)

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