その答えは、本書『アマゾンが描く2022年の世界』で分析、解説されるアマゾンの描くビジョンや長期戦略を理解することで見えてくる。

 著者の田中道昭氏は立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授。企業戦略&マーケティング戦略、及びミッション・マネジメント&リーダーシップを専門とし、シカゴ大学経営大学院でMBAを取得している。また、株式会社マージングポイント代表取締役社長として、多業種を対象とするコンサルティングの実務にも携わる。

●創業時からの「戦略目標」を貫くアマゾン

 本書には、アマゾンCEO兼共同創業者のジェフ・ベゾスが、同社を起業する際に紙ナプキンに書いたというビジネスモデルを表す図が掲載されている。これはアマゾンの現在の戦略を理解するのにも大いに役立つ。

 この手書きの図には、中心に「Growth(成長)」と書かれた円がある。そしてその周囲に「Selection(品揃え)」「Customer Experience(顧客の経験価値)」「Traffic(トラフィック)」「Sellers(売り手の数)」という4つの単語があり、この順番に「→」でつながれ循環している。

 多くの商品を取り扱い「品揃え」を増やすことで顧客の選択肢が増えると「顧客の経験価値」が増し、満足度を上げることができる。すると「トラフィック」が増える。

 すなわちアマゾンのサイトに人が集まってくる。多くの人が集まるサイトには、「そこで売りたい」という業者が寄ってくる。それによって「品揃え」がさらに増える。こうした好循環が「成長」に結びつく。

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「顧客の経験価値」を高めるさまざまなイノベーション