世界中を旅しつつ、スラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレス。インタビューの基本は英語である。それもフィリピンで習得したアジアン・イングリッシュ。ブロークンであるがゆえに、恐ろしくも奇妙で日常生活ではまず使うこともないようなやりとりも生まれてしまう。そんな危険地帯で現地の人々と交わした"ありえない英会話"を紹介する本連載。今回のキーワードは、ハワイのホームレスを取材中に飛び出した「No,thank you(結構です)」である。意外なものを断られたシチュエーションをご紹介したい。
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ホームレスの急増を理由に2015年10月16日、ハワイで非常事態宣言が出された。それならリゾートビーチがホームレスと水着美女であふれているのかも!?と、通常ならばあり得ないイメージを思い描いた私は、取材のためにハワイに渡ったのであった。
取材を開始すると、ワイキキビーチやアラモアナショッピングセンターでの聞き込みや、単独で自給自足をしているホームレスへのインタビューなどから、急増したホームレスが溜まっているという公園を特定することができた。
繁華街から西に向かっていく場所にあるチャイナタウン。そこに隣接する比較的大きな公園だった。普段なら家族連れで賑わっているらしいが、私が訪れたときには確かに異様な雰囲気だった。周辺道路にカートを持った人たち、公園内にも大荷物を抱えた集団が目立つ。バーベキューをしに来たグループではない。荷物のなかに寝具やテントなどがあることから、彼らがホームレスなのは明らかだった。
いざホームレスに話しかけるとなると、ジャーナリストを生業としている身でも多少の緊張感がある。危険を感じるとか、怒られるのが怖いのではない。1人に話しかけて拒絶されると、その空気が伝わって周辺にも影響を及ぼしかねないというリスクを懸念してのことだ。そのため1人目のインタビュー相手は慎重に選ぶ必要がある。