「It is a jail. I don't like there. And I have a work every day.」(あんなところは監獄みたいで好きじゃない。それに、俺は普段仕事をしているから)
「Job?」(仕事ですか?)
「Yes, I am working at a supermarket. But I can not get money.」(そうだ。スーパーマーケットで働いている。だけど、給料が安くてね)
ハワイのホームレスには、彼のように仕事があっても家賃が高くて払えないという人が少なからずいた。リゾート地として人気があるがゆえに地価が高騰し続けるハワイだけの問題ではなく、アメリカの都市部でも同様の現象が起きている。
「Thank you. This is for you.」(ありがとうございました。これ、お礼です)
私は謝礼代わりに空港の免税店で買ってきたタバコを差し出した。こうした取材ではお金を渡すよりもタバコのほうが数を揃えられて安く済むし、便利なのでよく使っていた。当然、「ありがとう」と言われるものと思っていた。ところが……
「No, thank you.」(けっこうだ)
「I see. If you are hungry, please sweets.」(そうですか。では、お菓子でも……)
「No thank you.」(けっこうだ)
「Why?」(どうしてですか?)
「There are no good for my health. I should keep sugarless.」(健康に良くない。それに、俺はシュガーレスにしている)
想定の斜め上の答えだった。おいおい……と一瞬だけ突っ込みたくなったのだが、冷静に考えれば彼が健康に気を遣っているのも理解できなくはない。
もしものときの医療費を気にしているのだ。病気はもちろん虫歯になったとしたら、治療にかかるお金が払えない。それほどまでにアメリカの医療費はべらぼうに高額なのだ。