●中身が薄いショーをやれば リピーターが減るのは当たり前

 東京モーターショーには現役の経営者だけでなく、元首脳も大勢訪れる。

 会場を歩き回っているとそういう元首脳と頻々と顔を合わせるのだが、「グローバル化が進む中、市場としては小さい日本のモーターショーが苦しいのはわかる。しかし、何回も連続して中身が薄いショーをやれば、リピーターが減るのは当たり前だ。今回がそのとどめを刺すことにならなければいいが」などと、行く末を心配する声ばかりが聞かれた。

 なぜ東京モーターショーの衰退が止まらないのか。

 理由の一つは、この元首脳が言うように、自動車産業のグローバル化が進んでいることだろう。市場規模の小さな日本でわざわざブランドをアピールする必要などない、という判断が出てくるのは無理からぬところだ。

 しかし、原因はそれだけではない。地元日本のメーカーの“熱意のなさ”もさることながら、それ以上に問題なのはモーターショーに関する自工会の考え方が完全に方向性を見誤っていることだろう。

 東京モーターショーはもともと世界のショーの中でも独自のポジションにあった。欧州フランクフルトや北米デトロイトのようなビジネスショーでもなければ、ASEANのタイ、中国の広州のように会場でクルマの商談が行われる販売ショーでもない。

 クルマというコンテンツで来場者を楽しませるという、ありそうで他にないショーだったのだ。

 出品をとりやめる海外自動車メーカーが続出し、北京、上海など中国のモーターショーに存在感を奪われる中、自工会はこのところ、日本の技術開発力を誇示するハイテクショーにすることで東京モーターショーの威厳を回復させようとした。

●「ハイテクショー」というのは 身の程知らず

 完成検査にまつわる不祥事で活動を自粛する前まで東京モーターショーの顔役を務めた西川廣人・自工会会長は、「量より質。各社の先端技術を持ち寄り、存在感のある世界一のハイテクショーにしていきたい」と語っていた。

次のページ