●コンセプトカーの “張りぼて”ぶりに呆れてしまう

 かつてはコンセプトカーを製作するのは膨大な費用と手間を必要とするというのが常識であったが、第2次大戦後に後発として本格参入した日本の自動車メーカー各社も今や立派な古参組。

 ショーカー製作のノウハウも蓄積され、ちょっとしたコンセプトカーを作ることなど朝飯前だ。今回のショーカーを見ると、その“朝飯前モデル”のオンパレード。

 往年の本気モードのコンセプトカー群を知る人々はその“張りぼて”ぶりに呆れるであろうし、現代しか知らない世代は逆に、自動車業界が打ち出す先端感は「この程度のものか」と、これまた興味を示さないだろう。

 結果、コンセプトモデルではマツダが次世代で目指すデザインを、職人技を駆使して形にした「コンセプトクーペ」がやたらと目立っている状況であった。

 東京モーターショーが元気だった時代は、各社がそのくらいの情熱をショーカー製作に注いでいたことを思うと、東京モーターショーもとことん落ちぶれたものだと慨嘆せざるを得ない。

 主催者、自工会の出し物に至っては、誰がこんなものを考えたのかと言わざるを得ないものだった。「未来のモビリティを仮想体験してもらう」という趣旨で、ビッグサイト西館に300人収容可能な大型のドームシアターを設置した。

 筆者はデジタルプラネタリウムの番組制作を生業の一つとしている。その経験から、ドーム投影にふさわしいコンテンツを作るには相当な予算が必要なのだが、どういう内容になっているのかと興味津々で観てみた。果たしてそこに投影されたのは、PC-9801時代のCAD線画かと思うような原始的な映像だった。

 おそらく機材をレンタルする時点で予算の大半を使い果たしたのであろうが、人並みの判断力があれば、この映像を見た段階で出品を取りやめるレベルである。おそらく、どこぞの代理店に丸投げ同然の状態だったのであろう。

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