
「修理して使うなんてケチ臭い」。そんなふうに考えている人がいたら、大きな誤解だ。思い出深い大切な品物こそ、おカネは惜しまない。年が改まったのを機に、断捨離に追いまくられる生活をやめて修活しませんか。
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■ドクターの手で玩具が動き出す
「息子のために買ったおもちゃなんですけど、スイッチを押しても動かなくなっちゃって……」
こう嘆く60代の女性が手にしていたのは、ちょうど手のひらに収まるほどの色鮮やかな自動車。レゴ・デュプロ製で、息子が成長した後は甥(おい)や姪(めい)の手に渡り、今度は息子の子、つまり孫のところへ戻ってきた。まっすぐ走って行き止まりでぶつかると曲がってまた走り出すはずが、今はピクリともしない。
「3歳の孫にクリスマスにプレゼントして使ってほしくて。動けばいいなと思って相談に来ました」
昨年末のクリスマス前の日曜、この女性が訪ねたのが東京都大田区の消費者生活センターに設けられた「おもちゃ病院・大田」だ。受付で動かなくなった自動車を診る担当医たち。「問診」を重ね、「病状」を把握していく。
「きっと錆(さ)びてしまったんだろうと考えて息子が錆を取ってくれたんですが、それでもまったく動かないんです」
こう続ける女性から大事な品を引き取り「治療」することになった。
治療を担うのは熟練の“ドクター”たち。主に技術系の職場で働いた経験を持つ60代以上のボランティアが中心で、有名メーカーの開発部長だった“名人”もいる。
病院はコロナ禍で一時閉院を余儀なくされた。コロナ前は相談者が院内でおもちゃが息を吹き返すさまを間近で見られたが、昨秋の再開後は、感染予防の観点から預かって修理している。料金は無料だが、部品を交換した場合は部品代(数百円程度)がかかる。
病院で事務を担当する伊藤豊さんによると、コロナ前は多い日で50人ほどの依頼があった。
「クリスマス前はそんなに多くない。お年玉をもらってしばらくすると、壊れたおもちゃを持った親子がやってくる」