いつかきっと面白くなるに違いないと信じて見続けてきたが、それももはや限界だ。そうでなくとも日曜の夜は、大河ドラマに「イッテQ!」に「モヤさま」にと見たいものが山ほどあり、そうつきあってもいられない。
昨年11月、番組スタート時の志(そもそもそんなものがあったのかも疑問だが)はどこへやら、今やなんでもありのダボハゼ番組と化した「フルタチさん」。ある時は「秘密のケンミンSHOW!」と見紛うような「日本の方言」特集。またある時は女子アナブームの再来を夢見ての「女子アナ大量作戦による日本語チェック」、そしてまたまたある時は、過去映像を使った安上がりな「芸能界振り返り企画」。
看板こそ「フルタチさん」のままだが、中身は統一感のない週替わり企画で落ち着かない。しかも、ちょっと評判がよければ第2弾第3弾と間を空けず同じ企画をやるというレパートリーの無さ。ハンバーグ、カレー、パスタ、ハンバーグ、カレー、パスタ……って、料理の苦手な主婦かよ、という感じだ。
このところのお得意は「60歳の怒りSP」。5月7日に放送したかと思ったら、6月18日に早くも第2弾をやり出した。噂によれば、倉本聰は話題のシルバードラマ「やすらぎの郷」の企画を最初にフジテレビに持ち込んだが断られたため、テレ朝でやることになったという。逃がした魚は大きかった。なぜ断ったのか、とフジテレビ上層部の地団駄を踏む音でお台場あたりが揺れているとかいないとか(笑)。
その失敗を踏まえ、にわかに「私たちはシルバー世代の味方ですよ」と老人に媚を売り出したところが滑稽でならない。シルバードラマに対抗し、シルバーバラエティでも標榜するつもりだろうか。
が、その老人の基準が「60歳」というのはいかがなものか。おそらく、番組MCの古舘伊知郎が62歳なので、「60歳」以上にすることで古舘を老人代表に仕立てて、中高年を味方につけようという魂胆なのだろうが、巻き込まれて老人扱いされた「60歳」視聴者は怒っているに違いない。あちらを立てればこちらが立たず。フジの無限とほほループはいつまで続くのやら。
番組では古舘に毒蝮三太夫、梅沢富美男を加え、街の人たちの不平不満を聞いていたが、だから何?という感じ。話を聞くだけなら犬猫でもできる。その意見をどう使うかが腕の見せどころなのでは。老人にガス抜きさせて媚売っときゃ見てもらえると思ったら大間違いですぜ、ってことで、今月のダラクシー賞を贈る。
※『GALAC(ぎゃらく) 8月号』より
桧山珠美(ひやま・たまみ)/食べる→罪悪感→運動→疲労感→寝る→倦怠感→食べる……延々と続くとほほ∞ループから脱出できるのはいつのことやら。「フルタチさん」と勝負 !