――グラミーを受賞したときは「信じられない」とコメントしていて、あれから2カ月がたちました。実感はわいてきましたか。
今も信じられません。グラミーを受賞した後、どういう感情でいるべきなのかもわかりませんが、いまだにシュールというか、非現実的です。
――周りは変わりましたか。
やっぱり変わりました。道を歩いていても気付かれたり、セレブみたいな扱いをしてもらっちゃったりして。それと、すごく好きで、はるか遠くから憧れてみていたミュージシャンが自分の音楽をサポートしてくれたり、一緒にコラボレーションしたいと言ってくださったり。思っているよりずっと早く、そうしたことが起きています。
――ジャズ界、音楽界ではサマラさんへの注目がとても高まっています。ご自身の役割や歌う意味を考えたりはしますか。
自覚はしています。自分がまだすごく若いので、昔からの伝統を引き継ぎながらも若い世代のリスナーを連れてくることを期待されていると感じています。でも、それをプレッシャーに感じることはありません。周りの声や期待をわかったうえで、自分の責任はアーティストとしての自分にとって一番クリエイティブなことは何かを考えること。そうでないと、自分にできる貢献ってなくなってしまうんじゃないかとも思うんです。
――最近は日本でも若いジャズミュージシャンが活躍しているんです。
もともとジャズが作られたときは若者の音楽だったわけですよね。今でこそジャズは年寄りの音楽だと言われているけど、ディジー・ガレスピーやチャーリー・パーカーがビバップ(自由な即興演奏が特徴のジャズの一様式)でジャズの世界を一変させたときは20代でした。エラ・フィッツジェラルドがビッグバンドで歌い始めたときも10代だったんですよ。
多くの人がクリエイティブな気持ちと情熱を持って、サウンドそのものを含めてジャズを180度変えてきた歴史があります。そこにまた時代が戻っているのだとしたら、それはすごく素晴らしいことだと思う。年を取るまで待たないで、ジャズを楽しんで演奏しているってすてきなことです。