昨年、AV(アダルトビデオ)に出演を強要された女性たちによる告発が相次ぎ、マスコミでも大きく取り上げられ、一気に社会問題化したAV出演強要問題。一体なぜ彼女たちは、AVに出演せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのでしょうか? 

 宮本節子さんによる本書『AV出演を強要された彼女たち』によれば、出演強要被害に遭ったのは、ごく普通の女性たち。本書では彼女たちが、AV業界から抜け出せなくなってしまった経緯を丹念に聞き取っていきます。たとえば女子大生Aさんの場合。



 「モデルにならないか?」と、渋谷でスカウトされたAさんは、執拗な勧誘に根負けし、契約書にサイン。しかし不安に思い、契約破棄をするためにプロダクションを訪れたところ、その場で強姦され映像を撮られてしまったと言います。以降、プロダクション側に身元を知られているため"身バレ""親バレ"の恐怖から、出演を強要される状況に陥ってしまったのです。



 本書によれば、Aさんの事例のように、スカウトマンやプロダクション側の狡猾な手段で、精神的にも物理的にも抵抗する力を奪われ、言われるがまま契約書にサインしてしまった事例が少なくありません。



 その結果、女性が撮影現場に行くと、実際にはAV。出演を拒否すると契約違反だと言われて高額な違約金や賠償金を払えと脅され、出演するしかなかった事例も紹介されています。



 そして1回でも出演してしまえば、娯楽として流通を続け、インターネット上にも映像が残ってしまうのが現実。現にAさんの動画は現在でもネット上に拡散し、DVDも流通していると言うのです。



 著者の宮本さんは、こうした女性たちの支援団体「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)」世話人で、ソーシャルワーカー。宮本さんによれば、これまで女性たちから寄せられた相談は200件あまりで、そのうち自死を確認した事例が2件、自殺未遂が1件あると言います。



 宮本さんは本書の中で、「アダルトビデオに出演した女性は、結婚就職にまで影響する差別を受けるのに、アダルトビデオを消費し楽しんでいる男性はなんら差別偏見の対象にならない。こうした、性に関わる非対称性は、その女性自身がどうこうできる問題ではない。社会として考えていかなければならないだろう」と訴えています。