鈴木は「分かった。探してみる」と応じた。昔からよく知る社員だから情にほだされたわけではない。経営者として個人的な感情は意思決定の中に入れない。ちゅうちょしなかったのは、西口であればやってもらいたいことがあるはずと踏んでいたからだ。

 拠点立ち上げから法人顧客の新規開拓まで苦労を共にしてきただけに、彼の実力も実績も十分知っていた。

 実際、社内の人事部門に投げ掛けてみると、社員採用業務をオファーする回答が返ってきた。人材紹介事業で採用業務の実務経験がある西口のキャリアとその人物評価から、良いパフォーマンスが期待できるという判断だった。

 がんになってなお、権利ではなく、能力で自らを売り込んだ西口は今、エン・ジャパンでのパートタイムと患者サポート活動、そして治療をそれぞれこなす日々を送る。

 西口のケースは一般的とは言い難い。IV期のがんではあるが、抗がん剤がよく効いていることもあり、高い業務遂行能力を維持している。一般的にはもっと体力が落ちる。しかし、長年の実績と人物評価から蓄積された信頼、いうなれば「信頼貯金」がたまっていた点に学ぶところは大きい。

 あなたは職場の人たちに一緒に働き続けたいと思われるのか。あなたは今の会社で働き続けたいと思えるのか。がんになったとき、会社と職場、社員の信頼関係が試される。

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