シュリッペンバッハ作の《ジャックハマー》はモダンジャズの流儀にのっとっている。ストレートアヘッドと言っていいだろう。夫妻のテーマ連弾に始まり、テーマ合奏を経て主にトリオをバックにラザフォード、林、デュデックほか(テナー)、ロウサーのソロが続き、テーマ合奏で終える。主要ソロイストのショーケースとして楽しむに如くはない。

 ラストはずばり《グッドバイ》だ。ベニー・グッドマン楽団のクロージング・テーマで締めるとは洒落が利いている。フリージャズの雄、ウィレム・ブロイカーの編曲とあって身構えたがオーソドックスで拍子抜け。甘くおセンチに仕上げて頬が緩むクローザーだ。

 フリージャズだが懸念するには及ばない。花も実もある前衛エンターテインメントだ。とはいえ、ベイシー風の醍醐味を求めてはいけない。このオーケストラの面白さは至ってオーソドックスな合奏とフリーインプロの対比の妙と、それらの配置と配分の妙にある。サービス精神に溢れるオーケストラによるドルフィー、ハンディ、グッドマンの有名曲に夫妻のオリジナルというアトラクションを巡るジャズのテーマパークとして楽しみたい。

【1996年 選外リスト】fine>good>so-so>poor
Untold Stories/Elements (Wavetone/?) good
Tokyo '96/Keith Jarrett (ECM/March 30) good+
Ki/Werner Ludi (Intakt/April 20) good, *1
Two Chaps/Evan Parker & Motoharu Yoshizawa (Chap Chap/April 29) good+
Konnichiwa! II/Climax Jazz Band (Tormax/May 3-6) good~
Unaccompanied Live in Yokohama/Lee Konitz (P.S.F./October 24) good+

*1: compi (1995,96), 1/2 on the date, 1/2 at studio in Zurich.
※評価は当該演奏のみ。

【収録曲】
1. Eric Dolphy Medley: The Prophet - Serene - Hat and Beard 2. The Morlocks 3. Shijo No Ai 4. Way Down South Where the Blues Began 5. Jackhammer 6. Goodbye

Berlin Contemporary Jazz Orchestra:
Alexander von Schlippenbach, Aki Takase (p, cond, comp, arr), Thomas Heberer, Henry Lowther, Axel Dorner, Issei Igarashi (tp), Marc Boukouya, Paul Rutherford, Wolter Wierbos, Haruki Sato (tb), Walter Gauchel (ts), Evan Parker (ts, ss), Gerd Dudek (ts, ss, fl, cl), Rudy Mahall (bcl), Eiichi Hayashi (as), Hiroaki Katayama (ts, bs), Nobuyoshi Ino (b), Paul Lovens (ds).

Recorded at Shin-Kobe Oriental Theater, Kobe, on August 6, 1996
except track 2 at Nakano ZERO Hall, Tokyo, on July 31, 1996.

【リリース情報】
1996 CD Live in Japan '96/Berlin Contemporary Jazz Orchestra (Jp-DIW)

※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。

※掲載当初、3段落目に「(BCOJ)発足時はベルリンのミュージシャンだけで編成されていたが」という記述がありましたが、誤りがあったため削除しました。BCOJには最初のコンサート時からベルリン以外に住むミュージシャンも在籍していました。お詫びして訂正に替えさせていただきます。(2017年4月16日 記)

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