「至福物質」というものがあるらしい。必須脂肪酸の一つであるアラキドン酸というのがそれで、食肉に多く含まれているそうだ。肉を食べるとハッピーな気分になれる。だからかどうかはさておき、ここぞという時に肉食を選ぶ方は多い。
もちろん、好みや体質の問題もあるだろうが、旨い肉に舌鼓を打つ瞬間を「口福」と呼ばずして何と呼ぼう――。そう思ってやまない大人たちにオススメのお店がある。「肉処 嘉陣」だ。京都の美食家たちの間では比較的にポピュラーな肉割烹というスタイルを、都内屈指の美食エリアで楽しめるという知る人ぞ知る名店である。
ひとくちに旨い肉と言っても、そのバリエーションは多種多様。肉処 嘉陣では、牛、豚、鶏などをそれぞれの部位にあわせて和洋の垣根を越えた調理法を駆使して、コース仕立てで提供してくれる。
例えば、写真の国産黒毛和牛の炭火焼き。いわゆるA5ランク、それも旨味の強い雌牛を遠火で丁寧に炙り焼き、マスタードベースの特製ソースでいただく。鼻腔にスッと抜ける炭火の香ばしさと肉の滋味が、噛むほどに増す逸品だ。
他に、真空低温調理したレバとハツの前菜、トリュフの餡かけ茶碗蒸し、ポルチーニ茸の赤出汁……。一事が万事、出される品々すべてに五感への驚きと発見がある。かようなまでに肉料理というものが奥深く、愉快で、そして何より美味しいとは――。この感動は、口にしてみなければわからない。パートナーとの大切な日、あるいは仕事関係の接待に。至福を求めて訪れたい。
撮影/関根明生