テレビの制作現場で働く方々にはまず、ブームをつくることで動物たちの身の上に何が起きるのか、想像力を持ってほしいと切に願う。

 テレビと動物コンテンツにまつわる問題でもう一つ大きなテーマは、収録現場における動物たちの取り扱いについてだ。以下は13年に『AERA』誌上で言及した内容だが、ここで改めて触れたい。

 猿の首に釣り糸を巻きつけて無線操縦車につなぎ、引っ張り回すことで、追いかけているように見せる――。フジテレビは13年11月1日、そんな「演出」を行ったバラエティ番組「ほこ×たて」の放送終了を発表した。当時の発表内容によると、同社にとっては、演出によって真剣勝負への信頼性を損なったことが致命的だったという。だが番組制作のために、動物への虐待行為を行ったことこそ、より大きな問題ではなかっただろうか。動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)ではこう定めている。

 第二条 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。

 そして、「愛護動物をみだりに傷つけた者」は2年以下の懲役か200万円以下の罰金が科される(第四十四条)。フジテレビによる一連の演出は、動物愛護法違反に問われかねない「事件」だったといえるのではないだろうか。

 振り返ってみれば、テレビ局による動物の取り扱いは、ずさんと言えるものが少なくない。

 例えばNHKは「爆笑問題のニッポンの教養」で、ハムスターを箱に入れて絶叫系マシンから落下させる「実験」を行った。NHK広報局は「専門家の指導のうえで、問題がないことを確認して行った」などという。だが動物実験における国際規範「3R」(苦痛軽減、代替法活用、使用数削減)に照らせば、あえて生きたハムスターを使う必要がある実験とは考えにくい。

 また「天才!志村どうぶつ園」では、前述のとおりタレントが野生動物を屋内で飼育したり、「生まれたばかりの子犬」をスタジオに登場させたりしていた。番組に長く登場していたチンパンジーについても、学術研究か繁殖目的以外の譲渡、飼育を禁じる「種の保存法」の観点などから、05年以降その飼育業者に対して日本動物園水族館協会が改善を求めてきた。10年には、番組におけるチンパンジーの取り扱いに改善が見られないとして、環境大臣の諮問機関である中央環境審議会の動物愛護部会小委員会で問題視されてもいる。日本テレビ総合広報部は「幼齢な犬に関しては動物愛護法の改正前、後ともに遵守して撮影、放送を行っている」「野生動物の飼育企画に関しては、視聴者に共感してもらえる内容にするため」「チンパンジーについては、種の保存法に基づいて撮影している」などとしていた。

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